もしも・・の研究所(兵庫教育大学小川(修)研究室)

「障害支援」を斜め135度から切り込もうとしたものの、素直に45度にしとけばよかったと思う今日この頃。。。

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メンバー紹介

指導教官

小川修史(Ogawa Hisashi)

4回生

臼井友紀(Usui Yuki)
高橋直大(Takahashi Naohiro)
舩倉浩之(Funakura Hiroyuki)
水谷綾(Mizutani Aya)

3回生

石塚津生(Ishiduka Tsuki)
笠井茉由子(Kasai Mayuko)
前田唯(Maeda Yui)
山岸栞茄(Yamagishi Kanna)

研究内容(修士論文)

ASD当事者とのAACにおける齟齬の解消を志向した意思把握スキル獲得プログラムの開発に向けた検討

自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder, 以下ASD)の診断基準の一つにコミュニケーション面の障害が挙げられ,支援者は障害特性を考慮したうえで,ASD児の表出性コミュニケーションを促す必要がある.その意味において,近年拡大・代替コミュニケーション(以下,AAC)が着目されており,中でも本研究ではシンボルを用いたAACに着目する.

ASD児がシンボルを用いて表出性コミュニケーションを成立させるためには,支援者がASD児の表出性コミュニケーションを促すための適切なシンボルを確保して提供することと,ASD児がシンボルを用いて表出性コミュニケーションを行ってきた際に,相手の意思をシンボルから把握することが必要である.そこで,提示されたシンボルからASD児が表出したい意思について把握するスキルを意思把握スキルと定義した.さらに,意思把握スキルを,ASD児が表出したい意思をシンボルから推測する意思推測フェーズと,推測の是非について,ASD児にシンボルを用いて質問する意思確認フェーズの2種類で構成されると仮定し,本稿では意思推測フェーズについて検討することとした.

意思推測フェーズについて検討する中で,シンボルが示す内容を単語に置き換えた場合,単語に接続する文節(以降,接続文節とする)のレパートリが多ければ多いほど,多面的な意思推測ができる可能性に着目した.同時に,推測可能な接続文節が少数であったり,推測した接続文節が同一の属性であったりする可能性,つまり支援者が推測可能な接続文節のレパートリが限定的である点に課題があると仮説を立てた.

そこで本研究では,支援者から収集した接続文節とWebコーパスから収集した接続文節を比較することで,支援者が推測可能な接続文節のレパートリが限定的である点について明らかにするとともに,プログラムについて今後検討・開発を進めることの意義について確認する.また,支援者に自らの接続文節のレパートリが限定的であることに対して気づきを促すことが,接続文節のレパートリを増やす,すなわち支援者が特定のシンボルから想起可能な意思のレパートリを増やすことに対する意識づけになるという仮説について検証した.

ASD児の文理解の困難さに対する意識づけを志向した教師向け学習支援システムの開発に向けた検討

アメリカ精神医学会は,自閉症スペクトラム障害 (Autistic Spectrum Disorder,以下 ASD とする)を,①言語発達が遅れ,②他人との社会的関係の形 成が困難,③限局された反復的な行動や興味,の 3 つの特性で定義している(American Psychiatric Association, 2013). 本稿では ASD のうち,通常学級に在籍し,知的発達に遅れを伴わないものの,言語発達が定型発達児と比較して相対的に低い児童を 対象とする.ASD 児は言語発達面に遅れがあり,文章理解の面で様々な困難さが生じる傾向がある.通常学級に在籍する ASD 児の場合,これらの困難さが授業内容や教科書の内容に対する理解の困難さに直結する可能性が懸念される.実際,文部科学省の調査により,通常学級に在籍する ASD児は学業上で様々な問題を示しており,インクルーシブ教育と合理的配慮の視点で,教師が ASD 児の文章理解の困難さを支援することに対するニーズは今後高まることが予想される.

このような背景から通常学級に在籍する ASD 児を指導する際,教師の発話を理解することや文章を理解することの困難さを意識した上で,自身の発話や文章の内容について振り返る必要がある.しかし,教師はこれらの困難さを意識することが困難であると推測される.そこで本研究では,今後通常学級においても ASD 児を指導する機会が増加することを想定し,通常学級に所属する教師を対象に,ASD 児の文章理解の困難さに対する意識付けを志向した学習支援システムの開発を目指している.本稿ではシステムの開発に先立ち,先行研究の調査を踏まえてシステムを試作し,試行した結果について報告する.

精神疾患の傾向がある児童生徒への対応を志向した知識拡張支援プログラムの開発に向けた検討

近年,統合失調症,うつ病,パニック障害,摂食障害等,精神疾患のある児童生徒の数は,平成 27 年の段階で 17.9 万人と報告されており,精神疾患のある児童生徒への教育の経験知を積み重ね,共有し,更に積み重ねていくことが,精神疾患のある子の教育を担当する学校や教員にとって喫緊の課題である.

精神疾患のある児童生徒への対応は,学校の中での指導・ 支援の方法が明らかになれば出来るものではなく,病気の種類だけでなく,家庭内での育ちや学校での不適応の起こり方も含めて,様々な可能性について考慮に入れたうえで,総合的に対応法を考えなくてはならない.言い換えると、教員固有の価値観で接することは,不登校や状態の悪化につながる危険性がある. そこで,個人が自分の思考や経験知に囚われずに,議論の場で他者の思考や意見を取り入れて思考を共有し,問題解決のための知識を拡張するスキル(以下,知識拡張とする)の早期獲得が教員にとって必要であると考えた.ただし,精神疾患の傾向がみられる児童生徒への対応は,医療や福祉と連携したうえで,教員個人ではなく学校全体で実施することが前提である.そのため,本研究ではあくまで知識を用いた早期発見・早期対応を志向するものであり,当該児童生徒に対するカウンセリングや治療を志向したものではない.よって,本論文では知識獲得ではなく敢えて「知識拡張」という語を用いる.

本研究では,知識拡張を目的とした教員志望学生を対象としたプログラムの開発を目指している.筆者は知識拡張のプロセスとして,「思考拡張プロセス」と「思考洗練プロセス」の 2 種類で定義し,本稿では,思考拡張プロセスについて検討した結果について報告する.

研究内容(卒業論文)

教員を志望する大学生を対象としたコミュニケーションスキルの自己理解プログラムの開発にむけた検討

近年,コミュニケーションスキル育成に対する社会的ニーズが高まってきていることに伴い,学校教育におけるコミュニケーション教育に対して注目が集まっている.文部科学省(1999)は,コミュニケーション教育推進会議審議経過報告を作成し,多様なコミュニケーションスキルは,これからの時代を生きる子どもたちにとっての基礎的な能力となると述べており,教育の現場でもコミュニケーションスキルの育成に強い関心が向けられていることがわかる.

文部科学省はコミュニケーションスキルを育むために必要な要素を4点挙げているが,これらの項目はいずれも多くの暗黙知が含まれており,暗黙知の教授の部分がコミュニケーション教育における重要な要素であるとともに,実施するうえでの難しさであると推測される.その意味で,藤本・大坊(2007)など,コミュニケーションスキルを形式知にする取り組みはこれまでに数多く実施されている.藤本らは6因子を,表出系スキル,反応系スキル,管理系スキルと構造化し,コミュニケーションスキルを形式知にする取り組みを行っている.一方で,コミュニケーション教育を実施するという観点では,たとえ形式知が多く存在していたとしても,それを単に子供に提示するのみでは表面的な理解にとどまる可能性があり,コミュニケーションスキルの育成という観点では有効とはいえない.子供のコミュニケーションスキルの獲得のためには,まずは教師自身が有する暗黙知を形式知と対応付けたうえで,顕在化した知を操作する経験を十分に有していることが前提となるが,これらを意識する経験は,教員研修を含め少ないことが予想される.

以上の背景から,筆者は教師自身が有する暗黙知を,形式知を用いて顕在化し,状況に合わせて操作可能な状態にすることをコミュニケーションの自己理解と定義し,教員養成系大学生を対象に,コミュニケーションスキルの自己理解を志向したプログラムの開発にむけて検討した結果について報告する.

藤本学,大坊郁夫(2007)コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み.日本パーソナリティ心理学会,第15巻 第3号 pp.347-361

特別活動での指導を対象としたリフレクション支援プログラムの提案

集団内の人間関係に起因すると思われるいじめ,不登校などが依然として大きな教育課題となっている昨今において,集団の中で生きる力を育む特別活動の意義・役割は大きい.一方で,特別活動の課題の一つとして,特別活動全体の目標は示しているが,内容ごとの目標は示されていないため,活動を通して何を育てるかが明確でない点が挙げられる.このことから,特に経験の浅い教師は,指導目標を明確に意識しないまま子供を指導してしまう可能性がある.特別活動は児童生徒に対する「働きかけ」が多くなる傾向があり,指導目標を意識しないと場当たり的な働きかけに終始してしまう可能性があることから,指導目標を意識することは特別活動において重要であると考えられる.ただし,たとえ指導目標を意識したとしても,それが抽象的もしくは主観的なものでは意味がなく,教員が個々で設定した指導目標について,具体化したり,根拠を考えたりといった指導目標の「精錬」が必要である.

指導目標の精錬という観点では,学習指導案の作成が有効であると考えられるが,特別活動は学級活動や清掃活動などの活動は日々継続的に行われているものの,学習指導案が作成される機会が教科等と比較して少ないため,指導目標を精錬する機会は少ないことが予想される.このことから,特別活動における日々の活動や働きかけについて,指導目標の観点からリフレクションを行うと共に,指導目標を精錬する機会は指導力向上の観点で有効であり,これらを志向した研修は有効であると考えられる.そこで本研究では,特別活動における指導目標の精錬を志向したリフレクション支援プログラムを提案した.

特別活動での指導を対象としたリフレクション支援プログラムの提案

障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として,平成28年4月に障害者差別解消法が施行されたことに伴い,我が国において「合理的配慮」の義務付けが進んできた.合理的配慮という観点で,ICTの活用が注目されている.ICTを用いることの大きなメリットとして,障害児者の学習や生活を支援することに加え,当事者の「自助」を実現可能な点が挙げられる.自助は,従来の「支援者ありきの支援」という構図,すなわち支援者が障害当事者(以下,当事者)を支援するという構図ではなく,当事者がICTを用いて,自身が抱く困難さを自分自身で支援することができれば,支援者と当事者で発生する齟齬に起因したストレスや負荷の解消が可能になるなど,その効果は大きいと推測される.本研究では,ICTの中でも自助を目的としたアプリケーションを対象とし,本研究では自助アプリケーションと定義する.

自助アプリケーションを開発する際の課題として,自助アプリケーションは障害当事者が使用することが前提であるため,当事者個別のニーズに合わせてアプリケーションを設計する必要性が生じる.しかし,当事者はアプリケーションを開発するためのノウハウを有しておらず,開発者は障害に対する理解および個別のニーズ把握に難しさがあるため,当事者のニーズを聞き出すことが難しい.そこで,開発者は当事者と連携を取り,持続可能な形で「協働」していくことが求められる.

情報システム開発の観点では,クライアントと開発者の協働は一般的なアプローチであるが,障害当事者との協働という観点では,まだ一般的でないため,システム開発のノウハウを蓄積し,一般化することが求められる.そこで,本研究では,当事者との協働を実施し,一般化に向け,協働プロセスについて整理することを目的とする.

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